くらげさろん

とびっきりの台詞を探しています。映画はやっぱり劇場で観たい!こんな作品を観てきましたよっていう映画感想ブログです。ネタバレあり。

『ルース・エドガー』【映画感想・ネタバレ・見どころ・名台詞】

窮屈で息ができないんだ『ルース・エドガー』

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©2018 DFG PICTURES INC.

アフリカ系アメリカ人のルースは、文武両道に秀で人気もある完璧な高校生。

『現代のアメリカン・ドリーム』として白人の養父母であるエドガー夫妻や学校の期待を一身に背負っている。

そんなルースだが、歴史上の人物の主張を代弁せよという課題で、提出したレポートの内容から危険思想の持ち主ではないかと、アフリカ系のベテラン教師ハリエットに目を付けられる。

ハリエットはロッカーを勝手に捜索し違法な花火を発見、ルースの養父母に通報したことで、ルースとハリエットは反目しあうことに

果たしてルースは完璧な優等性なのか、それとも裏の顔を持つ怪物なのか…。

原題 "Luce"

Luceとは主人公の名前。光、という意味がある。

エリトリア出身の彼の本名を養母がどうしても発音できず、養父が改名を提案、ルース(光)という名前を与えられたという経緯がある。


6/5(金)公開『ルース・エドガー』予告篇!

見どころ

ルースははたして善か悪か、知りたいという気持ちを巧妙にくすぐられ、ラストまで興味を逸らさない。描かれる断片を寄せ集め、こちら側は全貌を推測するしかないが、その過程で人としての価値というものを考えさせ、米国が内包する問題をあからさまにする秀作。全編を通して効果的な音が不穏さ・緊張感を煽る。

レッテルを貼るのは安心したいから

ルースはエリトリアで少年兵士だった過去を持つ。7歳の頃、エドガー夫妻に引き取られアメリカに渡ってきた。セラピーに通い長時間かけてトラウマを克服し、現在はバージニア州アーリントンの高校に通う。陸上部に所属し、討論で全国大会にも出場。成績優秀で誰からも好かれる模範的な優等生で、オバマを思わせる。

養父母の自慢の息子だが、とりわけ養母エイミー(ナオミ・ワッツ)の思い入れは強い。ルースを育てるのにかかりきりだったため、自分の子供を持つ暇がなかった。養父ピーター(ティム・ロス)はそこに不満があるよう。また、意地悪な見方をすれば、アフリカ系移民を立派な米国人として育て上げた私たち白人、という立ち位置に酔っているところもある。

ベテラン歴史教師であるハリエット(オクタヴィア・スペンサー)は、米国生まれのアフリカ系アメリカ人。移民であり恵まれているルースとは、同じアフリカ系ながら立ち位置を異にする故に、ルースの将来に期待し、案じている。米国に暮らす黒人は、とにかく模範的でなければならないという考えを持ち、自身の抱える病気の妹の存在も隠している。生徒をステレオタイプに当てはめて対応するところがあり、ルースは不快に感じている。

ルースは一体どう振る舞ったらよいのだろうか

周囲の期待に応え続け、どこまでも祭り上げられて、白人に望まれる理想的な黒人の在り方である完璧な『ルース・エドガー』で終生いなければ、ルースは米国で生きる価値がないのだろうか。その立ち位置は同じアフリカ系アメリカ人にとっては取って代わりたいものかもしれないが、本人にとってはどうだろう。完璧な自分しか必要とされないと感じ続け、素の自分を持て余すのは、苦痛でしかないように思う。

気に入った台詞

どうしたら特別になれるんだろう。どうして僕はルースじゃないんだろう

全校生徒の前で演説するルースに向けられる賞賛のこもった生徒たちの視線。そこに込められた叫び。同じ悪さをしても、ルースの友人である黒人は咎められて陸上部を退部になり奨学金も取り消され、転落人生が待ち構えている。

彼はいわゆる黒人らしい黒人。君はルース

そんなクラスメートを評しての白人の友人の台詞。決めつけで物事を判断するのが息をするように自然なことである日常。強盗があれば判を押したようにアフリカ系黒人でしたと目撃情報があるというのを思い出した。

窮屈で息ができない

そして冒頭にも記したこの台詞。

誰もかれもがルースを自分が見たい理想に当てはめようとしてくる。では本当のルース、素のルースはどこにいるのかと言えば、そもそものルースは名前すら取り上げられてしまっているのだ。これは幸せなのだろうか。それとも手にした幸運を死守するための当たり前の代償なのだろうか。

どうもいい備忘録

今回はどうでもよくはないのだが、忘れたくない台詞を書き留めておく。

  • 本当は誰も僕を心の底から信じてはいないんだ。
  • 僕たちは同じ箱に詰められている。アメリカによって光が届くのはほんの少し。
  • 僕は聖人でなかったら、怪物なんだ。