くらげさろん

とびっきりの台詞を探しています。映画はやっぱり劇場で観たい!こんな作品を観てきましたよっていう映画感想ブログです。ネタバレあり。

『男と女 人生最良の日々』【映画感想・ネタバレ・見どころ・名台詞】

過去でも未来でもなく、現在にしか『男と女 人生最良の日々』

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©2019 Les Films 13-Davis Films-France 2 Cinema

片田舎で雑貨屋を営むアンヌ(アヌーク・エーメ)。獣医の娘と孫がいる。

そこへかつての恋人の息子アントワーヌが突然現れ、父に会ってくれないかと頼みこむ。

海辺の施設で余生を送る父ジャン・ルイ(ジャン=ルイ・トランティニャン)は、徐々に記憶を失くしかけており、鮮明に話すのはアンヌのことばかりなのだと言う。

二人は再会を果たすも、ジャン・ルイにはアンヌ本人だと分かっておらず…。

原題 "Les plus belles années d'une vie"

フランス語で意味は、人生で最もしあわせな年。

ダバダバダ ダバダバダ――のメロディでお馴染みの恋愛映画『男と女』(1966)の続編。同じキャスト、スタッフで、53年後の二人を描く。


『男と女 人生最良の日々』冒頭映像

見どころ

過去と現在、そして現在の延長がときおり空想だったり、と入り組んだ構成で、夢か現実かたまに分からなくなったりするところがとても映画らしい映画。前作と同キャストゆえ主人公2人とその子供たちに長い時間が同じだけ流れているので、それぞれの人生を感じさせ、キャラクターに深みがある。昔のパリの街を信号無視して疾走するシーンは思いがけなく宝物を見せてもらったよう。

アヌーク・エーメの時と共に在る魅力

前作『男と女』でのアヌーク・エーメの飛び抜けた美しさが印象的だったので、最初は老けたな正直感じたが、それはスクリーンに大写しになれば当たり前のことだ。立ち姿や引きの映像になるとたちまち女優然として颯爽となり、先の印象は跡形もなく払拭された。施設にジャン・ルイを訪ねていくときの黒を重ねたファッションがカッコいい。時の流れと共に変化する美しさと変わらぬ美しさを共存させ、自分の魅せ方を十分に心得ている女性。

ジャン・ルイの一途さ

レーシングドライバーとしてかつては一世を風靡したジャン・ルイも、今は施設で車椅子生活。イベントにも参加せず、周囲と積極的に交流しようとはしない。一人、庭に出て海を眺めて時を過ごす。

アンヌが現れても本人だとは分からない。だが髪をかきあげるアンヌを見て「素敵な仕草だ」と褒める。自分はたくさんの人を愛したが、あなたのような人を一番愛したと告げ、50年以上も前に好きだったその女性について語り出す。

気に入った台詞

「あなたによく似た人が好きだった」

こう言われて、さらに当時の写真を今でも大事にしているのを知らされれば、否が応でも心は動くだろう。たとえその恋が、うまくいかなかったものだとしても。いや、成就しなかった恋だからこそ、今でも煌めいているのかもしれないけれど。

「俺と逃亡しないか」

アンヌと話すうちに、ジャン・ルイはそう持ちかける。さすが元レーサーで女たらし。その表情には昔の面影が確かにある。

 

アンヌの店に、父の調子が良くなったとアントワーヌが報告にくる。アンヌの娘フランソワーズもまじえ、思い出話に花を咲かせる。当時子どもだった二人はドーヴィルの同じ寄宿学校にいたのだ。子どもたち二人の年の重ね方もよい。

「私たち兄妹になりそこねたのよ」

 

ざっくりとあらすじを追いかけて。

ジャン・ルイはアンヌの訪問を楽しみにしているが、眠っていたりとタイミングがなかなか合わないことが続いている。

施設にエレナ(モニカ・ベルッチ)が面会に来るのだが、ジャン・ルイには分からない。ジャン・ルイはアンヌと別れた後、レースで優勝したときに花を渡した女性と結婚しており、その娘なのだった。けんかのとき、あなたの子ではないと言ったりしていたらしく結構ひどい関係だったのだろうか。それにしてもモニカ・ベルッチは美人だが圧が強い。

 

ジャン・ルイは記憶力テストでは満点を取るらしく、施設の人たちはジャン・ルイが忘れたふりをしているのでは、と思うこともあるらしい。医師はジャン・ルイの記憶力を刺激するためにも、アンヌとの外出を勧める。

 

アンヌの車で、二人は思い出の地を巡るドライブに出かける。ノルマンディーの浜辺やホテルなど、前作のシーンが現在に交互に挿入される。現在の二人が本当に過去の自分たちを思いだし切ないようなてれくさいようななんともいえない落ち着かない表情を醸し出す、その場にこちら側も立ち会っているような不思議な感覚に陥る。

ドーヴィルの浜辺に暮れていく夕焼けの緑の光が余韻を残す。美しい映画。

どうでもいい備忘録

  • 気になった台詞がいくつもあったのに、うろ覚え。

    「よりよい対象が現れるまでは、誠実である」そう本当そうなの。全面同意。
    「死は払うべき税金」ジャン・ルイの言葉。うまいこと言う、と思った。

  • エレナのシーン、少し違和感。モニカ・ベルッチの圧のせいかな。ジャン・ルイの過去を知るうえで必要なシーンなのかもしれないが。
  • 人生最良の日々をまだ生きてはいない 
              ――ヴィクトル・ユゴー
  • 『男と女』"Un homme et une femme"

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    ©1966 Les13 Film