くらげさろん

とびっきりの台詞を探しています。劇場で観た映画の感想をつらつらと。洋画メイン。ネタバレあり。

7000rpmの世界を知る者たち『フォードvsフェラーリ』【映画感想・ネタバレ】

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(c)2019 Twentieth Century Fox Film Corporation.

ル・マン優勝経験のある元レーサー、キャロル・シェルビー(マット・デイモン)は現在カーデザイナーとして成功している。

そこへフォードから、モータースポーツ界の絶対王者フェラーリを打倒するための車を作れととんでもない依頼が来る。

シェルビーはテストドライバーとして、型破りだが凄腕のケン・マイルズ(クリスチャン・ベイル)に声を掛ける。

男たちは90日で史上最高のレーシングカーを作るという無謀な賭けに挑んでいく…。

原題 Ford v Ferrari

フォード対フェラーリ。1966年ル・マン24時間耐久レースにて絶対王者フェラーリに挑んだ男たちの人間ドラマ。ヨーロッパでの公開タイトルは"Le Mans ’66"。

マット・デイモンとクリスチャン・ベイルのW主演。


映画『フォードvsフェラーリ』予告編

見どころ 

7000rpmの世界に魅入られた男の背中がカッコいい。レースに情熱を注ぐ男たちの物語に並行して現場に横槍ばかり入れる大企業上層部との戦いが展開。

速い車が大好きなので冒頭のエンジン音だけで、既に至福…。

7000rpmの世界に思いを馳せる

rpmとは1分間のエンジン回転数(Revolution per Minuteのこと。大まかに言えば、回転数を上げると馬力が出てスピードにつながるって感じ。回転数はタコメーターで測定。運転席で目にしているはず。7000rpmから先は赤く(レッドゾーン)過回転域として表示される。過回転になるとエンジンに負荷がかかり過ぎ壊れる虞が出てくる。ちなみにタコメーターのタコはギリシア語の速さに由来。

7000rpmの世界には限られた者しか入ることができない――。マイルズやシェルビーにはどんな風に見えていたのだろう。

クリスチャン・ベイルとマット・デイモンのW主演

自動車整備工場を経営しながらレースに参加している、偏屈で取扱いの難しい天才ドライバー、マイルズ(左)にクリスチャン・ベイル。

心臓病のため引退を余儀なくされた元レーサーで、現在はカーデザイナーとして成功しているシェルビー(右)にマット・デイモン。

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(c)2019 Twentieth Century Fox Film Corporation.

クリスチャン・ベイルは安定の演技派。『バイス』からまたしても激痩せしてる。体、大丈夫か。 マット・デイモンはもうこの太目サイズで安定なのね…。ひと頃大好きだったので、昔つきあいのあった人を見る感覚。もうしょうがない許す。そして何を演じてもやっぱりマット・デイモンなのだった。でもいいんだ。

この笑顔を見るとマット・デイモン、やっぱり好き…となる。

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(c)2019 Twentieth Century Fox Film Corporation.

気に入った台詞

1963年、米自動車メーカー最大手フォード・モーターは新たな顧客層としてベビーブーマー世代を開拓するためイメージの刷新を図ろうとする。副社長アイアコッカのプレゼンでの言葉。

「ジェームズ・ボンドはフォードは運転しないんです、会長」

フォードはル・マン24時間耐久レースで4連覇中モータースポーツ界の憧れの存在であるフェラーリの資金難に目をつけ、買収交渉に入る。ところが土壇場で破談にされ、フィアットとの交渉の当て馬にされたことが判明。交渉決裂の際の言葉を、担当者であるアイアコッカは正直に会長に告げる。言えと言われたからって、これはきつい。

フォードは醜い車を醜い工場で作っていればいい。会長は太ったつむじ曲がり。おまえはヘンリー・フォードではない。おまえは所詮2世だ。

激怒した会長ヘンリー・フォード2世は打倒フェラーリを掲げ、予算と人材をあるだけ突っ込んでマシン開発を猛烈に進めていく。

ル・マンのフィニッシュラインの下100フィートにあのいまいましい油まみれのイタリア人を埋めてやる。我々はそれを見に行くんだ、と息巻く会長。

アイアコッカはル・マンでかつて優勝した唯一の米国人シェルビーに開発を打診する。わずか90日間で絶対王者フェラーリを倒すマシンを開発せよという無理難題を、金ならいくらでも払うから、と突きつけられたシェルビーは言う。

「勝利は金で買えない。でも勝ち目のある奴なら買えるかもしれない」

シェルビーはマイルズの腕を見込んで、話を持ち込む。経済的困窮から自動車整備工場を差し押さえられていてレースの世界から身を引こうと考えていたマイルズは逡巡するも、最終的に妻と息子に後押しされて、テストドライバーとして協力することなる。

父に憧れる息子(ノア・ジュープ)。最近子役と言えばこの子ばかりの気がする。父と息子のシーンには、ちょいちょい死を思わせる会話があるから、伏線じゃないかとレースシーンの度にドキドキした。

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(c)2019 Twentieth Century Fox Film Corporation.

シェルビーとマイルズを中心に頼れる仲間たちと共に、フォードGT40のプロトタイプをテストして開発を進めていく。

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(c)2019 Twentieth Century Fox Film Corporation.

フォード上層部の横槍に、あなたはどこまで我慢できるか?

現場が一丸となっているのに、フォード上層部は邪魔ばかり。大企業の官僚体質は現場と会長の意思疎通を遅らせ、現場を疲弊させる。どこ見て仕事してるんだ!?開発チームとは次元が違い過ぎて唖然とする。特に許せないのはフォードの上級副社長レオ・ビーブ。マイルズをチームから外そうとあの手この手を使ってくる。ビーブは新マスタングに以前ケチを付けられたことや、花形ドライバーに粗野なマイルズがそぐわないとか、もうとにかく彼のことが気に食わなくて仕方ない。それでも強引にシェルビーが開発したマシンを扱えるのはマイルズだけだと会長に直訴しドライバーとして押し通してしまったのでお冠。さらに最悪なことにレースの直轄責任者がビーブになってしまう。これなあ、なんとかならなかったのかなあ。なんでその人選をしたのか。やっぱりヘンリー・フォード2世って所詮2世だったのかななんて。

そして迎えたレース本番。

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(c)2019 Twentieth Century Fox Film Corporation.

フェラーリとのデッドヒートを制し、加速し続けるマイルズは7000rpmの世界へ――。

記録更新を重ねるマイルズにビーブはここでなんと!減速を要求。フォード車3台で1-2-3でゴールを切れ、その方が宣伝になるから、だと。ギィーッッッ。こいつ、何を言い出すのやら。マイルズには3大耐久レース完全制覇がかかっているのだぞ!

しかし、あの他人の言うことなど全く聞かないマイルズが、ここに来て減速するのですよ…。万感の思いがあったろうに。

並んでゴール!と思いきや、なぜか後方から出走したマクラーレンが優勝ということに。グギィィィーーーッ。どうしてくれるんだビーブさんよー、ってなる。対してマイルズもシェルビーも大人だなあ、と。本作とても好きなのだけれど、ここがどうしても納得いかなくて爽快感がいまいち。事実だから仕方ないのだけれど『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』みたいな展開にできなかったか。

マイルズ自身はこの事実をどう受け止めていたのだろうか。彼はその後マシン開発に専念。テストドライブ中の事故で死去する。残された者にとっては、マイルズが殿堂入りしたというのがせめてもの救いになっただろうか。 

鑑賞後、ケン・マイルズについて知りたいと思ったのだけれど、情報が少ない。シェルビーに関してはめちゃめちゃある。ああ、この人のことか、と気づいた。

それにしても。7000rpmの世界か――。